知財論趣

再生エネルギー利用の難しさ

筆者:弁理士 石井 正

再生エネルギーの時代
 地球温暖化問題あるいは原子力発電所問題等から、再生エネルギーに関心が高まっているようです。我が家も数年前に太陽光発電装置を設置し、ささやかながら再生エネルギー利用をしているところです。はたして装置を設置した投資を回収できるほどに発電できるものか確信はないのですが、これまでのところは随分、頑張っているようです。こうした再生エネルギーには様々あるのですが、ヨーロッパに行くと、太陽光発電よりも風力発電が目につきます。

風力発電システム
 風力発電システムは想像以上に大型で、最新技術の固まりでもあります。ブレードの大きさは直径で50メートルから90メートルになりますから、風車のトップは地上から100メートル近くになるわけで、30階のビルに相当します。この羽は毎分10~30回転し、見ているとずいぶんとゆっくり回転しているよう思えるのですが、ブレード先端は時速150~300キロの早さで回転しています。この風力発電は自然エネルギーの活用の典型例なのですが、問題がさまざまに発生していて、非難を受けることが多いのだそうです。

さまざまな課題
 たとえば環境への影響があります。日本の場合、山地に建設することが多く、その場合、かなり大規模に建設地を造成する必要があり、道路だ、送電線だというと環境への負荷が大きくなるのです。鷲や鷹などの大型の野鳥への影響も大きいのですが、これらはとりあえずは無視しておきましょう。欧州や米国で問題となっているのは、低周波騒音で、これが周辺地域の人々への深刻な問題となっているのです。10サイクルや20サイクルの低周波騒音がいつも発生していると、周辺の人々はイライラしたり、不安状況になったり、ともかくひどい神経症状が発生するようで、これが無視できないのだそうです。

発電効率の問題
 それに加えて日本では風力発電の稼働率が思わしくないのです。つくば市の学校に設置した風力発電設備では、発電稼働率があまりにも低いので、損害賠償問題となりました。風力発電に適した風がないのが問題なのでしょうが、そうした場所をわざわざ選んだ専門家の識見も疑わざるを得ません。そもそも日本は風力発電に適した場所ではないとすると、どこが最適地なのかと言えば、誰しも欧州それもオランダの周辺やドイツ、スペインを想像するでしょう。確かに歴史的にもオランダやスペインは風力を利用してきました。オランダの場合、大西洋上に大規模に設置することもできます。ところがその洋上風力発電所が問題に直面しているというのです。洋上ならば環境問題も低周波雑音問題もなく、しかも北海の比較的安定した西風を利用できそうに思われるのですが。実際には、洋上風力発電の場合、建設コストがきわめて高額になり経済採算性が悪く、しかもメンテナンスコストもひどく高くなるというのです。

風まかせの不安定な発電
 それでも風があって稼働率が良ければ、それでなんとか採算が取れるのだろうと想像します。ところが風力発電の電力量が自然任せのためにひどく不安定なのが最大の悩みのようなのです。風が吹きはじめると、数時間で急に大電力発電し、風がやめばその逆になります。洋上風力発電所の場合、適地にかなりの規模の数を設置するため、一度、強い風が吹くと突然、大電力発電となりますから、電力量を比較的容易に加減できる火力発電所を建設して、全体として電力量を安定させなければなりません。風力発電所を建設すると、その分に見あった火力発電所を建設しなければならないと言う皮肉なことになるわけです。再生エネルギーの利用という場合、解決すべき課題は想像以上に多いようですね。