国内裁判例レポート 2023年 第26号
「エルデカルシトール前腕部骨折抑制医薬用途発明」事件
(知財高判令和4年12月13日 令和3年(行ケ)第10066号)
(知財高判令和4年12月13日 令和4年(ネ)第10065号)
(1)審決取消訴訟、特許権侵害差止等請求控訴事件において、医薬用途発明の新規性が争点となった事例。
(2)「技術常識」に基づく当業者の認識によれば各相違点は実質的な相違点とはいえないとして、新規性を否定した(特許庁審決の判断を支持)(控訴人の請求を棄却)。
国内裁判例レポート 2023年 第25号
「水分制御装置」事件
(知財高判令和5年2月16日 令和4年(行ケ)第10052号)
(1)審決取消訴訟において、審判請求時の補正を却下したことに関する手続違反が争点となった事例。
(2)裁判所は、本件補正が独立特許要件に違反するとした本件審決の判断に誤りがないと判断した上で、引例3に基づく進歩性欠如を理由とする本件拒絶査定と、引例3及び技術常識を示す文献(甲2文献乃至甲5文献)に基づく進歩性欠如を理由とする本件審決とは、理由の論旨を変更するものではなく、特許法159条2項の「査定の理由とは異なる拒絶の理由を発見した場合」には該当しないと判断した(特許庁審決の判断を支持)。
国内裁判例レポート 2023年 第24号
「銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置」事件
(知財高判令和4年11月16日 令和3年(行ケ)第10164号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、取消事由2(相違点1の判断の誤り)について、引用発明においては、ニッケルの添加が課題解決のための必須の構成とされているというべきであり、引用発明の「合金材料」について、ニッケルの添加を省略して銅銀二元合金とすることには、阻害要因があると判断した(特許庁審決を取消)。
国内裁判例レポート 2023年 第23号
「ドワンゴ対FC2」第2事件
(知財高判令和5年5月26日 令和4年(ネ)第10046号)
(1)海外に設置されたサーバと日本国内に存在するユーザ端末とによってコメント配信システムを新たに作り出す被告の行為が、特許法2条3項1号所定の「生産」に該当するか否かが争われた事例。
(2)原審では、特許法2条3項1号の「生産」とは特許発明の全ての構成要件を満たす物が日本国内において新たに作り出される必要があるとの理由により、被告行為は非侵害と判断された。しかし控訴審では、具体的態様等の事情を総合考慮すると、当該行為が日本国の領域内で行われたものとみることができるとの理由により、特許権侵害を認めた。
(3)ネットワーク関連発明に係る特許権の域外適用に関する判断事例。
国内裁判例レポート 2023年 第22号
「印刷された再帰反射シート」事件
(知財高判令和4年10月31日 令和3年(行ケ)第10085号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、副引例(甲3)に記載の技術事項を主引例(甲1)に適用する動機付けはなく、また主引例の一部の構成のみを取り出して副引例の構成に置換する動機付けもないと判断した(特許庁審決を取消)。
国内裁判例レポート 2023年 第21号
「茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを具えた茶刈機」事件
(知財高判令和5年4月20日 令和4年(行ケ)第10098号)
(1)審決取消訴訟において、新規性および進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、「直後方」の限定を考慮し、甲1発明に対する本件発明1の新規性および進歩性を肯定した(特許庁審決の判断を支持)。
国内裁判例レポート 2023年 第20号
「朔北カレー」事件
(知財高判令和5年3月9日 令和4年(行ケ)第10122号)
(1)審決取消訴訟において、出願商標「朔北カレー」と引用商標「サクホク」との類否が争点となった事例。
(2)本願商標より「朔北」部分を抽出して分離観察することを是としつつ、特に観念を積極的に認定し、引用商標とは非類似と結論づけた(特許庁審決を取消)。
(3)称呼が同一である漢字(表意文字)からなる商標と片仮名(表音文字)からなる商標について、類否を判断する際の参考事例。
国内裁判例レポート 2023年 第19号
「空気入りタイヤ」事件
(知財高判平成29年2月7日 平成28年(行ケ)第10068号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、副引例(甲2)に記載の技術事項を主引例(甲1)に適用しても、数値限定を含む本件発明の構成を容易に想到できないと判断した(特許庁審決を取消)。
国内裁判例レポート 2023年 第18号
「空調服の空気排出口調整機構」事件
(知財高判令和5年2月7日 令和4年(行ケ)第10037号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)技術分野の関連性および課題の共通性を考慮して、主引用発明(公然実施発明)に接した当業者は、副引用発明を採用するように動機付けられたものと認めるのが相当として、本件発明の進歩性を否定した(特許庁審決を取消)。
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