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欧州連合商標制度(基本事項)についての概要説明(2016年3月23日改正)

1. はじめに

欧州連合商標(EUTM)制度とは、1996年4月1日に発効し下記のすべての欧州連合国28か国において一つの出願および一つの登録で一つの商標権を取得することを可能にする、国際的商標登録制度です。

オーストリア,ベルギー,キプロス,チェコ,デンマーク,エストニア,ドイツ,ギリシャ,フィンランド,フランス,ハンガリー,アイルランド,イタリア,ラトビア,リトアニア,ルクセンブルク,マルタ,ポーランド,ポルトガル,スロバキア,スロベニア,スペイン,スウェーデン,オランダ,イギリス,ブルガリア,ルーマニア,クロアチア

欧州連合商標制度は、商標指令と欧州連合商標規則とからなりますが、商標指令が改正(2016年1月14日発効)され、欧州連合商標規則(EUTMR)が大幅に改正(2016年3月23日発効)されました。 以下、かかる改正後の本制度について概説します。

2. 欧州連合商標

2016年3月22日までは、欧州共同体商標(European Community Trade Mark: 略称CTM)と称されていましたが、同年3月23日から欧州連合商標(European Union Trade Mark: 略称EUTM)と称されます。

欧州連合商標とは、個人の名称の他、単語、模様、文字、数字、商品またはその包装の形状等を含め書き表わすことができる標識をいいます。したがって、立体商標や音響商標等の非伝統的商標も欧州連合商標たり得ます。

3. 欧州連合商標の登録を受けることができる者

欧州連合商標の登録を受けることができる者は、欧州連合加盟国の国民の他パリ条約の同盟国の国民をも含みます。したがって、日本人または日本法人も欧州連合商標の登録を受けることができます。

4. 出願

欧州連合商標出願には以下の事項・書類が要求されます。

  1. (1) 願書
  2. (2) 委任状
  3. (3) 商標見本
  4. (4) 商品又はサービスの記載  
    出願における指定商品・役務は、clear and precise(明確かつ正確)に記載する必要があります。類見出し(クラスヘディング)の表現は、clear and preciseである場合に限り用いることができます。クラスヘディングを含め一般的記載を用いて指定商品・役務を記載した場合、ニース分類のアルファベット順一覧表に含まれる全ての商品または役務を対象とするのではなく,文字通りに(literally)解釈されることになりました。
  5. (5) 区分指定  
    多区分一出願制を採用しているため複数分類指定可能です。指定区分を増やす毎に追加料金が必要です。出願手数料(official fee)は以下の通りです。
    1区分目の料金   850ユーロ
    2区分目の追加料金    50ユーロ
    3区分目以降の区分毎   150ユーロ
  6. (6) 出願人の名称、住所及び国籍の記載
  7. (7) 優先権主張の基礎となる対応のパリ条約国における出願(優先権を主張する場合)
  8. (8) 欧州連合諸国における対応の出願/登録(先行権を主張する場合)

5. 出願先及び代理人

欧州連合商標出願は直接スペインのアリカンテに所在する欧州連合知的財産庁(The European Union Intellectual Property Office: 略称EUIPO)に出願するか、欧州連合国の国内官庁を通じてEUIPOに出願します。

日本から出願をする場合は、欧州連合諸国のリストされた代理人を通じて、出願しなければなりません。

6. 使用言語

欧州連合商標出願の使用言語はEUの公用語である英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、オランダ語、ギリシヤ語、フィンランド語、スウェーデン語、デンマーク語、ポルトガル語、ポーランド語、ブルガリア語、クロアチア語、チェコ語、エストニア語、フィンランド語、ハンガリー語、アイルランド語、ラトビア語、リトアニア語、マルタ語、ルーマニア語、スロバキア語、スロベニア語の24言語です。

EUTM出願人は出願の際、さらに第2言語(EUIPO公用語)を特定する必要があります。第2言語は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語及びイタリア語の5言語から選択しなければなりません。

7. 登録要件、審査および異議申立

欧州連合商標は自他商品またはサービスを識別することができるものでなければ登録を受けることができません。

欧州連合商標が、欧州連合諸国における国内先行登録商標と同一または類似であっても職権により拒絶されることはありません。つまり、職権による先後願審査はしません。但し、異議申立があった場合には拒絶され、また登録後無効審判により無効にされることになります。もっとも、異議申立があった場合には、クーリングオフ期間中(最長2年)に当事者同士の和解交渉が可能であり、多くの異議申立事件において和解が成立する傾向にあります。

8. 国内出願への変更

欧州連合商標出願または登録は欧州連合国のすべてまたはいくつかの国への国内出願に変更することが可能です。 欧州連合商標に拒絶理由または無効理由が存在する場合にこの国内出願への変更が有益です。変更費用は各変更国に支払わなければなりません。この変更された出願は欧州連合商標出願が有していた優先権や先行権(seniority)を保有します。

9. 先行権(seniority)

先行権とは、欧州連合商標の所有者が自己の先行国内登録を放棄等により消滅させた場合でも、その国内登録が継続していた場合に有するのと同一の権利を引き続き有するとみなされる利益をいいます。この先行権により欧州連合商標の所有者は、欧州連合国における自己の国内登録を消滅させても不利益を被らないことになります。この先行権を主張するためには、国内登録の商品またはサービスが欧州連合商標の商品またはサービスに含まれている必要があり、かつ、国内登録の証明書を提出する必要があります。

10. 商標権

欧州連合商標が登録になった場合には、欧州連合国すべてにおいて排他的権利(9条)/商標権が発生します。但し、欧州連合域内での使用により商標権は消尽したとされ域内の各国への並行輸入は商標権侵害を構成しません。一方、域外から域内への並行輸入は商標権侵害を構成します。

11. 使用

欧州連合商標が登録になった場合には、欧州連合国の一国における使用をもって不使用とはされず、その登録を維持することができます。

12. 侵害手続

各欧州連合国は欧州連合商標裁判所(European Trade Mark Court) を特定する必要があります。欧州連合商標裁判所は、侵害訴訟を管轄します。欧州連合商標裁判所の判決は、欧州連合国のすべてにおいて効力を有します。

13. 譲渡およびライセンス

欧州連合商標登録は商品毎またはサービス毎に分割移転可能ですが、地域的に分割して移転することはできません。一方ライセンスは欧州連合国の地域毎に付与することが可能です。

14. 欧州連合商標の出願費用

出願費用は通常の国内出願の費用の約2倍または3倍ですが、25ヶ国の欧州連合国すべてに出願する場合には、国内出願をした場合の費用よりもはるかに低額で済むと思われます。例えば、3または4以上の欧州連合国において商標の保護を追求する場合には、欧州連合商標出願の方が各国への商標出願をするよりもより安い費用で手続をすることができると思われます。

15. まとめ

欧州連合商標では先後願の審査が行なわれないため、登録になっても権利の信頼性に全く不安がないとはいえません。しかし、一旦欧州連合商標を取得すれば、登録の更新管理ははるかに安い費用で手続も簡便に済ませることが可能であり、さらにその使用義務も欧州連合国の1ヶ国における使用で足ることから、絶大なメリットがあります。

上記手続は、欧州連合商標制度の基本事項のみです。
[更新日 2016年3月23日]

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