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米国商標制度(基本事項)についての概略説明

1. 制度の法的根拠

米国は、コモン・ローを基礎にし、州法及び連邦商標法に基づき商標を保護しています。

  1. (1) コモン・ロー(普通法):使用主義を採用しており、商標の善意採択および善意使用という事実行為により商標権が発生します。商標保護はコモン・ロー上のpassing off(詐称通用)という不正競争法理の一局面といえます。
  2. (2) 州法:州法はコモン・ローの考え方を成文化したものといえます。古くからほとんどの州で州商標法があり、「州登録」が認められています。1949年には模範州商標法が起草され、40以上の州がこれを採用していると言われています。したがって、州商標法はコモン・ローや不正競争法理の適用を排斥するものではありません。
  3. (3) 連邦商標法:1946年法(Lanham法)つまり、連邦商標法は、コモン・ロー上の原理を基礎として成立し、商標の連邦登録を認め、その登録にかなり大きな効果を与えます。連邦商標制度は、使用主義に立脚しつつ、登録主義的色彩をかなり加味しているといえます。
  4. (4)コモン・ロー、Lanham法および州法の関係  
    これらの根本法理は同一であるため相互抵触はほとんどあり得ず、重畳的適用が可能です。Lanham法は連邦レベルで適用され、州法およびコモン・ローは州レベルで適用されます。

2.アメリカにおける商標の意味

自他商品・サービスの識別標識としての意味と商品・サービスについての責任標としての意味があります。

3. 商標の使用

Lanham法には商標の使用の定義はありませんが、解釈上、商品商標の使用とは、通常の取引において、商品に直接商標を付すかまたは商品との関連において商標を使用することをいい、商品または包装と物理的に結合していない広告的使用は商標の使用とはいえません。

一方、サービスマークについては広告的使用をもって商標の使用といえます。

取引上の使用(use in commerce)には、州際間使用(use in interstate commerce)と外国通商使用(use in commerce with the United States)とがあります。

4. 保護対象

Lanham法により保護される商標は、言葉、名称、シンボル、数字、文字、形状(configuration)、スローガン、色彩、紋章、模様、図案またはこれらの組合せの他、音、光、臭いも含みます。

5. 登録要件

登録には、主登録簿と補助登録簿とがあります。

  1. (1) 絶対に登録を受けることができない商標は以下の通りです。
    1. (a) 不道徳、欺瞞的もしくは中傷的な事柄、または生存中の者もしくは死者、団体、信仰もしくは国家的シンボルを軽蔑しもしくはそれらとの関係を誤って暗示し、またはこれを侮辱しもしくはその名誉を傷つけるおそれのある事柄からなり、またはこれらの事柄を含む商標(連邦商標法第2条(a))。
    2. (b) 合衆国またはいずれかの州もしくは地方自治体またはいずれかの外国の旗章、紋章もしくはその他の記章またはこれらと類似するものからなり、またはこれらを含む商標(2条(b))。
    3. (c) 生存する特定の個人の氏名、肖像もしくは署名からなり、またはこれらを含む商標。但し、その他人の書面による同意を得ているものを除く。また、未亡人の生存中における、死亡した合衆国大統領の氏名、署名もしくは肖像からなり、またはこれらを含む商標。但し、その未亡人の書面による同意を得ているものを除く (2条(c))。
    4. (d) 特許商標庁に登録されている標章、または合衆国において他人が先に使用しており未だ放棄していない標章もしくは商号に類似しているために、出願人の商品に使用すると混同もしくは誤認を生じ、若しくは欺罔するおそれのある標章からなり、またはこれらを含む商標(2条(d))。
  2. (2) 主登録簿(Principal Register)に登録できる商標(2条)としては、さらに下記のいずれかに該当しないことが要求されます(2条(e))。
    1. (@) 出願人の商品に使用されたときに、その商品を単に記述するにすぎないかまたは欺罔的に虚偽の記述をする標章。
    2. (A) 出願人の商品に使用されたときに、原産地表示を除き、その商品を主として地理的に記述する標章。
    3. (B)出願人の商品に使用されたときに、その商品を主として地理的に欺罔的に記述する標章。
    4. (C) 主として単なる氏姓にすぎない標章。
    5. (D) 全体として機能的である事項を含む標章。  
      上記2条(e)の(@)、(A)、(C)に該当する標章であっても、それが出願人の商品に取引上使用されて識別性のあるものとなっている場合には、主登録簿に登録することができます。
  3. (3) 補助登録簿(Supplemental Register)に登録できる標章(23条)
    上記(e)ないし(g)に該当し識別力が十分でないため、主登録簿に登録できない商標であっても、継続して使用されており、将来識別力を獲得する可能性がある場合、又は本国登録がある場合は、補助登録簿に登録することができます。

6. 出願手続

  1. (1) 出願形式
    多区分一出願が可能であり、出願の形式としては以下の5種類があります。
    1. (i) 使用に基づく出願
       州際間使用又は外国通商使用に基づく出願です。
    2. (ii) 使用意思(Intent to Use)に基づく出願
      1989年11月16日施行の法改正により導入されました。使用主義を採用しつつ、使用の意思があれば出願できるとしたものです。
    3. (iii) パリ条約の本国登録に基づく出願
    4. (iv) パリ条約の優先権に基づく出願
    5. (v) マドリッドプロトコルに基づく出願
  2. (2)必要書類
    1. (i) 願書
    2. (ii) 使用陳述書(Statement of Use)(使用に基づくとき)
    3. (iii) 委任状
    4. (iv) 商標見本(Drawing)(標準文字のとき不要)
    5. (v) 使用見本(Specimens)(使用に基づくとき)

7. 審査

審査の結果、上記5の要件を満たさない場合に、拒絶理由通知が発せられ、原則として6ヶ月以内に応答しなければなりせん。応答は、意見書、補正書、同意書、証拠などを提出して行います。

応答したが、拒絶理由が解消できないとき、拒絶査定が発せられ、拒絶理由が解消したときは、出願公告がなされ、何人にも異議申立の機会が与えられます。異議申立は、特許庁商標公報掲載後30日以内にすることができます。異議申立がなければ、登録許可がなされます。

8. 審判

拒絶査定に対して、審判を請求することができます。審決に不服の場合、連邦高等裁判所、さらに最高裁判所で争うことができます。

9. 連邦登録の効果

  1. (1)主登録簿への登録の効果
    1989年11月16日施行の法改正により、商標が登録されると、当該商標は出願日に遡って全国的規模で使用開始されたものとみなされ、これを擬制使用(Constructive Use)といいます。さらに以下の効果があります。
    1. (i) 補助登録薄上の登録の有するすべての利益
    2. (ii) 法律によって登録者が商標の所有権を主張していることを知っていたと推定されること(22条)
    3. (iii) 登録が有効であるという推定(7条(b))
    4. (iv) 商標を登録者が所有しているという推定(7条(b))
    5. (v) 登録証に明示された商品またはサービスにつき通商上登録商標等を使用する排他的権利が登録者にあるという推定(7条(b),33条(a))
    6. (vi) 財務省の関税局に登録証を預託しそれによって登録商標またはそれと混同を生じるほどに類似する商標を付けた商品の輸入を阻止する権利(42条)
    7. (vii) 財務省の関税局に登録証を預託し、もし登録者が合衆国に住所を有すれば、登録商標を付けた外国製の真正商品の輸入を阻止する権利(関税法526条)
    8. (viii) 商標がその登録の日後連続5年間継続使用され、かつ現に取引において使用されているものは、不可抗争性の利益を取得する(15条)。原則として何人もその登録の有効性を争うことができなくなり、侵害訴訟において被告側は登録の無効を原則として主張できないことになります。
  2. (2)補助登録簿への登録の効果
    1. (i) 州籍、国籍の相違がない場合でも連邦地方裁判所に訴訟を提起することができる権利(26,39条)
    2. (ii) 合衆国登録の所有権を理由にして、未だ商標が使用されていない多くの外国に商標登録を出願する権利
    3. (iii) 悪意の侵害者から3倍賠償を受ける可能性(35条)
    4. (iv) 商標が特許商標庁に登録されていることを意味する登録表示を使用する権利 (29条)
    5. (v) 善意の侵害者に対する防御となること

10. 登録の維持

登録された商標権の維持のためには、誠実かつ継続的な使用が必要です。

登録後6年の期間経過前1年以内(5年目〜6年目の間)に「使用宣誓書」の提出が要求されます。これは、登録日から5年間不使用の登録商標の整理をするためです。
さらに更新手続きが必要です。つまり、登録日から10年の期間の終了の時に更新出願をする必要があります。更新出願は、存続期間満了前1年から出願でき(商標法条約加盟前は6ヶ月以内)、満了日後6ヶ月(商標法条約加盟前は3ヶ月)の猶予期間があります。

11. 商標権侵害

商標権侵害に対しては、差止請求、損害賠償請求、税関手続(Custom Office Blocking Action)、国際貿易委員会(International Trade Commission)による排除命令などが認められています。

12. 連邦希釈化防止法(Federal Trademark Dilution Act of 1995)

1996年1月16日、ダイリュション条項(連邦商標法43条(c))を追加し、周知商標の保護強化と周知の認定要素の明確化を図りました。これは連邦商標法19条の衡平の原則に基づきます。

これによれば、周知商標の商標権者は、商標が周知になった後に第三者の商標等の使用が周知商標の識別力を希釈化する場合はこれを排除することができます (43条(c))。希釈化とは、周知商標の商品または役務を特定し(identify)識別する(distinguish)能力を減じさせることをいいます(連邦商標法45条)。

13. マドリッドプロトコル(以下、「マドプロ」と称します)加盟後の米国商標法

米国において、マドプロ施行法(the Madrid Protocol Imprementation Act)が2002年11月2日に成立し、2003年11月2日に米国において発効し、マドプロ出願ができるようになりました。マドプロ施行法は、現行の連邦商標法(TRADEMARK ACT OF 1946)の末尾に第60条〜第74条として追加されました。これは、マドプロと使用主義の調和を図り、以下のような米国特有の規定を設けています。

  1. (1)使用意思宣言書
    米国を指定国とする保護拡張請求つまりマドプロ出願−MM2による−は、国際事務局が同出願を受け取ったとき、 誠実な使用意思宣言書(Declaration of bona fide intention to use the mark in commerce)−MM18による−が添付されていることを条件として、米国出願とみなされます(66条(a))。
  2. (2)擬制使用
    マドプロ出願は、以下のうち最先の日に、7条(c)の擬制使用(constructive use)を構成します(66条(b))。
    1. (i) 保護拡張請求が国際出願において提出されたとき、国際登録日
    2. (ii) 保護拡張請求が国際登録日後なされたとき、保護拡張請求の記録日
    3. (iii) 67条に基づく優先権主張日
  3. (3)使用の要件
    マドプロ出願は、使用されていないことを理由として、拒絶されることはありません(68条(a)(3))。
  4. (4)登録要件
    マドプロ出願が登録されるためには、補助登録簿ではなく主登録簿への登録要件が要求されます。この登録要件を満たさない場合、拒絶通知が発せられ(68条(b))、 あるいは異議申立がされることがあります。
    拒絶理由のないマドプロ出願には、「保護拡張証明書」(Certificate of Extension of Protection)が発行されます(68条(c)(4),69条(a))。
  5. (5)権利の効力発生日
    保護拡張証明書の発行日より、その保護拡張は主登録簿における登録と同一の効力及び有効性を有し、国際登録保有者は主登録簿における登録の所有者と同等の権利及び救済を有します(69条(b))。
  6. (6)使用証明
    1. (i)保護拡張証明書の発行日より6年目の期間満了前1年以内に宣誓供述書 (affidavit)を提出しなければ、その保護拡張は失効します(71条(a)(1))。これは、8条宣誓書提出義務に対応するものです。この提出期間は国内出願の場合と同じく6ヶ月間のグレースピリオドが認められます。
    2. (ii) 保護拡張証明書の発行日より10年毎の末日までに宣誓供述書(affidavit)を提出しなければ、その保護拡張は失効します(71条(a)(2))。これは、更新時の宣誓書提出義務に対応するものです。この提出期間は国内出願の場合と同じく6ヶ月間のグレースピリオドが認められ ます。
上記手続は、米国商標制度の基本事項のみです。
[更新日 2016年11月21日]

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