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知財論趣

知財論趣
弁理士と顧客−望まれる両者の関係
弁理士 深見 久郎
  1. (1) 弁理士の使命は知的財産権業務で顧客に貢献することである。そして知的財産権業務の主たるものは開発(創造)、保護、活用の面の支援である。したがって、我々弁理士の支援による貢献が最大となるように常に考えて行動することもまた弁理士の使命の中に含まれる。ここでは、弁理士の支援の最大化について考えてみたい。
  2. (2) 私は知的財産権業務に入って既に50年を超えた。この期間の最初の4分の1は企業での知的財産権管理業務であり、後の4分の3は特許事務所での弁理士としての知的財産権専門業務であった。
    後者の弁理士としての業務の期間に、弁理士と顧客との間の関係について或る2人の方から見解を聞かせて頂き深く印象に残っていることがある。
    その第一は、私が38年前に事務所を開設した当時お目にかかった企業出身の開業弁理士の先輩から伺ったもので、「結局事務所弁理士は、専門業務能力に関して云えば、顧客から委任される事件の業務を通して育てて頂くものである」という旨のことであった。
    その第二は私の事務所開設後、事務所が軌道に乗った頃、大手企業の知的財産部部長の方から伺ったもので、「結局企業は事務所を選び希望通りに使うものである」という旨のことであった。
    私はこれらお二人の方々の見解が我々弁理士と顧客との間の関係を考える上で重要なヒントを含んでいると考える。
  3. (3) 私の見解では、弁理士と顧客の関係で第一に要求される重要な要件は、弁理士としての業務能力である。
    我々弁理士の業務は、知的財産権に関する高度な専門的法務事務であり、業務の性質上、法律、技術、語学の高度な専門的知識と実務能力を備えることが要求される。もしそれがなければ我々は企業から使ってもらえないからである。
    ところが、折角当初に所定の業務能力を顧客から認められ業務支援の機会を頂くことになっても、我々弁理士の業務能力は法制度の変革、技術の発展に追随して成長する必要があることは当然で、単なる追随の成長の範囲に留まる限り、それは業務能力の向上とは認められない。単なる追随の成長以上の経験に応じた真の高度化された専門業務能力の向上が求められる。そしてこのような経験に基づく真の専門業務能力の向上こそ継続的に顧客から業務支援の機会を頂くことによって初めて実現可能である。その結果、「弁理士は顧客に育てて頂く」ことになるのである。
    しかしながら「顧客に育てて頂く」と云っても、「顧客から業務支援の機会を頂くことによって」の意味であって、真の専門業務能力の向上は結局自己研修以外に無い。
  4. (4) 私の見解では、弁理士と顧客との関係で第二に要求される重要な要件は、弁理士が顧客に対し快適な雰囲気、接触、折衝、交流、交信などを実現し、結果として業務遂行ないし業務取引が快適に、円滑に、迅速に実現できる業務連携の姿勢でなければならないということである。
    この快適円滑な業務連携の姿勢が弁理士と顧客の関係で第二に重要な要件となるのは、弁理士業務といえども、知的財産権業務に関与の人間(弁理士と顧客)の立場から見れば、結局一般業務と同様に感情を有する人間を中心に行なわれる業務に変わりがないからである。
    この意味で、快適円滑な業務連携の姿勢の評価は前述の業務能力評価に比べてより主観的であり、適否の評価は主観により分かれる。それにも拘らず、もし結果として不快、非円滑、遅滞の業務連携の姿勢の故に顧客に業務依頼の減少または停止を決断させるに到らせることになっては、そのような結果をもたらすことになった原因としての不適切な顧客対応の謗りを免れない。それは、顧客の不満足から顧客の業務依頼減少ないし停止になり、我々弁理士の使命の達成を不可能にし、弁理士生命の喪失に繋がるからである。
    ここで注目すべきは、顧客は事務所を選び弁理士を選び、如何なる業務を依頼して事務所や弁理士を如何様に使うかを決定する権限を有することである。そして顧客のこの決定基準の主要要件は事務所およびそれを構成する弁理士の専門業務能力に加えて快適円滑な業務連携の姿勢も含まれることは明らかである。
  5. (5) 我々は日常業務の多忙の中で、業務能力の向上と快適円滑な業務連携の姿勢を忘れがちとなる。しかし、我々は知的財産権業務の専門家(プロ)である。知的財産権業務のプロである弁理士と顧客との関係を考える上で、私は改めて(1)業務能力の向上と(2)快適円滑な業務連携の姿勢の重要さを強調したい。
(平成19年7月2日記)

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